第56回 無権代理と表見代理

  代理による法律行為には、①代理表意、②顕名、③代理権――が必要であることは前回お話ししましたが、このうちのどれが欠けても法律効果が本人に帰属しません。
このうち、実際に最も問題が発生するのは、③の代理権がないのに、代理人と称して法律行為を行ってしまう場合です。

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今回は、この代理権がないのに代理人として法律行為を行ってしまった場合の、法律効果の有効・無効について解説します。

民法56-1

 

Ⅰ.代理権のない者の行為は原則無効

  代理権がないのに代理人として行動してしまうことを無権代理と言います。代理権のない者の勝手な行為によって本人に法律効果が帰属するのを防ぐため、無権代理は原則として無効です。

  もっとも、無効と言っても公序良俗などの絶対的無効とは異なり、本人が追認することで、契約の時に遡って有効とすることができます。これは、無権代理行為が本人にとって有益な場合もあるからです。

 

Ⅱ.無権代理の相手方には何の権限もないの?

  無権代理行為において、本人にはその行為を有効にも無効にもできると前述しましたが、相手方には2つの権利が生じます。

その権利は、

①本人に対して追認するかしないかを確認できる催告権

②本人の追認がない無権代理行為の取消権――です。

  相手方が催告権を行使しても、本人が何の反応も示さない場合は、本人は追認権を失い、無権代理行為は無効と確定します。さらに、相手方は、無権代理人に対して被った損害の損害賠償請求が行えます。

  また、無権代理の取消権を行使すると、契約は初めからなかったことになります。ただし、相手方は、催告や無権代理人の責任追及ができなくなります。

  では、無権代理人の責任は追及されないのでしょうか? 
無権代理人は、自分の代理権が証明できず、本人の追認も得られなかった場合には、相手方に対して、①契約の履行または②損害賠償責任――を負います。どちらを選択するかは、相手方が選べます。

  もっとも、無権代理人が代理権を持っていないことに対して相手方が悪意有過失であったときや、無権代理人に行為能力がなかった場合はこの限りではありません。

 

Ⅲ.無権代理が有効とみなせる場合

  無権代理は上記のように本人の追認がない場合は原則無効となりますが、それで、相手方に予期せぬ損害を与える心配はないのでしょうか? 

例えば、借りられるはずのお金が借りられなくなったら困りますよね。サッカーで、選手交代をして先発の選手がユニフォームを脱いで帰ってしまったのに、後退した選手に出場資格がないから交代はなかったことにと、審判に告げられたようなものです。

そこで、相手方から見て無権代理人があたかも代理人と思っても仕方がない場合を表見代理と言い、民法は、その法律行為を有効としました。そして、表見代理が認められる場合を次の3つ挙げています。

①代理権授与表示の表見代理

②権限踰越(ゆえつ)の表見代理

③代理権消滅後の表見代理

  ①の代理権授与表示の表見代理とは、無権代理人に代理権を授与したような外見があり、相手方がこれを信頼した場合で、例を挙げると、白紙委任状を代理人が勝手に濫用したような場合です。

  ②の権限踰越の表見代理とは、代理人が与えられた代理権の範囲を超えて代理行為をする場合で、例を挙げると、20万円までの買い物の代理権を与えているに過ぎないのに100万円の買い物をしてしまったような場合です。

  ③の代理権消滅後の表見代理は、代理権の契約が切れた後に代理行為を行った場合で、例えば、取引の代理権を与えられていた店員が解雇されて代理権を失った後に、卸問屋と売買契約を結んだ場合がこれに当たります。

  以上のほか、無権代理人と本人の間で相続が発生することがよくあります。被相続人と相続人の地位が融合し、追認と似た状況が発生する場合があるなどの問題をはらんでいます。

今までの判例で、具体的な例を次の表にまとめましたので、参考にしてください。

民法56-2

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