第55回 代理と代理人の権限

  私たちが生活する中で、法律行為をしなければならない場面に接した時、その法律行為は、必ず自分でしなければならないわけではありません。自分の代わりにその道の専門家や、信頼できる人にやってもらうことができます。こうした制度を民法では代理制度と言って、代わりの人を代理人と呼びます。

  今回は、代理制度を、①代理制度の種類、②代理の要件、③復代理人――の順で解説します。

 

Ⅰ.代理人に法律行為をやってもらえる

  代理人が本人に代わって法律行為を行う代理制度の効果は、他人である代理人の意思表示の効果が本人に帰属することで、この効果を他人効と呼んでいます。

民法55-1

  代理を代理権発生の根拠に注目して分類すると、①任意代理と②法定代理に分けることができます。任意代理とは、本人が代理人を信頼して代理権を授与したもので、法定代理とは、本人の意思と関係なく法律の規定で発生するものです。

代理権の範囲は、法定代理の場合には法律によって決まっていますが、任意代理の場合は、代理権を与える契約によって決まります。ただし、契約に権限の定めがない場合は、①保存行為、②代理の目的である物あるいは権利の性質を変えない範囲内で利用、改良を目的とする行為――についての権限と規定されています。

  また、任意代理と法定代理では、代理権の消滅事由や、後で説明する復代理の場合でも違いが発生します。

代理権の消滅事由は、任意代理では、

①本人または代理人の死亡

②本人または代理人の破産手続き開始の決定

③代理人の後見開始の審判――です。

法定代理の場合は、

①本人または代理人の死亡

②代理人の破産手続き開始の決定

③代理人の後見開始の審判――です。

 

Ⅱ.代理の要件

  復代理の解説をする前に、代理の要件を整理しましょう。

代理の要件には次の3つが必要です。

①代理人と相手方との間の法律行為が有効に成立すること

②代理人が当該代理行為が本人に帰属することを明らかにしたうえで意思表示すること

③代理人が当該代理行為の代理権をもつこと

  ①については、当然と言えば当然なのですが、例えば、代理人が錯誤(49回で解説)に陥っていた場合、代理行為は無効となり、法律行為の効果は本人へ帰属しません。ただし、本人が錯誤の事情を知っていた場合には、本人が代理人の錯誤を主張できないことになっています。このように代理人が行う法律行為が有効に成立することは、トラブルが発生しそうなときには大事な要件となってきます。

  ②のことを顕名(けんめい)と言い、これを行わないと、相手方は法律行為の効果は代理人に帰属するものと思うので、相手方の受諾等は、あくまで代理人を信頼しての行為と考えられます。そこで、民法では、相手方の保護のために顕名を必要としているのです。

  ③の場合は、無権代理という問題が発生します。これについては、次回に詳しく説明します。

  では、ここで、一つ問題です。任意代理において、制限能力者は代理人になれるでしょうか?

答えは、YESです。

  えっ…?と思われる方も多いと思いますが、制限能力者が代理人として法律行為を行っても、その効果は本人に帰属し、制限能力者に不利益が生じないということがその理由です。逆に言うと、代理人が制限能力者であることを理由に、代理行為を取消すことはできません。

 

Ⅲ.復代理人のした行為も本人に帰属する…

  前述でちょこっと(顔を出した復代理とは、代理人がさらに代理人を選定することです。復代理人が登場すると、「本人(A)→代理人(B)→復代理人(C)→相手方(X)」と法律関係に4者が登場し、関係が少し複雑になります。

  本人と代理人AB間では、代理人Bが復代理人Cを選任しても、代理人Bが本人Aの代理権を失うわけではなく、本人のために代理人としての法律行為を行って本人に効果を帰属させることができます。

  本人と復代理人のAC間では、復代理人Cの法律行為は本人Aに帰属します。復代理人Cは代理人Bの代理人となるわけではないことに注意が必要です。

民法55-2

1)復代理人の選任

  復代理人を選定できる場合は、法定代理と任意代理の場合で異なります。

  まず、法定代理の場合、通常、法定代理人は本人の意思と無関係に選ばれるので、復代理人の選任が本人の信頼を裏切ることにはつながりません。つまり、復代理人の選定は代理人が常に自由に選任できます

  一方、任意代理の場合、本人は代理人を信頼して選任したのですから、代理人が勝手に復代理人を選任したのでは、本人の信頼を裏切ることになる可能性も出てきます。
そこで、代理人が復代理人を選定できるのは、

①本人の許諾があるとき

②やむを得ない事情があるとき――に限られます。

  ②のやむを得ない事情とは、代理人が健康を害して代理人としての法律行為を行えない場合などです。

 

2)代理人の本人に対する責任

  代理人は復代理人を選定したら、もう、本人との法律関係に何の心配もないのでしょうか? 
いえいえ、当然、代理人は本人に対しての責任を負うわけですが、これも、法定代理と任意代理で異なります。

  任意代理の場合は、復代理人選任の権限が限定的なので、本人に対する責任も小さく、復代理人の選択や監督に落ち度があった場合のみ責任を負うことになっています。また、復代理人を本人の指名で選任した場合には、代理人が、復代理人が不適任または不誠実と知っていたのに本人に知らせなかったり、解任をしなかった場合だけ責任を負うことになっています。

  法定代理の場合は、代理人は、復代理人の選任に大きい権限を持っているわけですから、権限の大きさに応じて責任も大きくなります。例えば、復代理人が本人に損害を与えてしまったときは、代理人に何の落ち度がなくても本人に対して責任を負います。

  ただし、法定代理人がやむを得ない事情で復代理人を選任した場合は、任意代理人と同様の扱いとなります。

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