第52回 法律行為と意思表示

  私たち国民の社会活動は、契約に代表される法律行為によってなされています。そして民法は、社会活動のルールとして法律行為の規制を行って、規律を保っています。
今回は、その法律行為について、①法律行為自由の原則、②法律行為の分類、③法律行為の効力――と順に勉強していきましょう。

 

Ⅰ.法律行為自由の原則

  法律行為は、人々の意思表示で成り立つ行為で、意思表示の意図とする効果が認められるものを指します。

例えば、売買契約は皆さんもよくご存じの契約ですが、売買の申込みという意思表示と売買の承諾という意思表示の2つの意思表示が合致して成り立ちます。そして、売主には、意思どおりに物を売る義務と代金を受取る権利が、買主には、意思どおりに代金を支払う義務と物を請求する権利が発生します。

  このように、法律行為は意思表示を絶対の要件としていて、もし意思表示が無効のものなら、それから成り立っている法律行為も当然無効となります。

  法律行為が、各個人の自由な意思活動によって処理されるべきとする原則を法律行為自由の原則と言い、民法で認められている大原則です。

  そして、この原則を民法が採用していることは、市民社会における各個人はその意思に基づいて自由に社会生活関係を規律することが最も妥当だとする近世法の理念を採用していると言えます。

  法律行為を行う人は、必ずその行為を行うことによって得られる効果を目的としています。これを法律行為の目的と言います。

  しかし、法律効果の目的は、常に明らかであるとは限らず、場合によっては、法律効果の目的を分析して当事者の意思表示の内容を明確にする法律行為の解釈をしなければならない場面に遭遇します。この解釈の基準は、法律行為の当事者が、法令中の公の秩序に関しない規定(任意規定と言います)と異なる意思表示をした場合には、その意思に従うとすることです。逆に言うと、公の秩序に関する規定(強行規定と言います)と異なる意思表示をしたときは無効となると言うことです。

 

Ⅱ.法律行為の分類

  法律行為はその要素の意思表示の態様によって、次の3つに分類することができます。

①単独行為

②契約

③合同行為

  ①の単独行為は、1人が1個の意思表示で成立する法律行為です。
②の契約は、対立する2個以上の意思表示で成立する法律行為です。
③の合同行為は、同方向の2個以上の意思表示が合致して成立する法律行為です。

民法52-1

  また、法律行為を発生する法律効果によって分類すると、次の3つに分かれます。

①法律行為によって債権を発生させる債権行為

②物に対する権利を発生させたり変更または消滅させる物権行為 

③物権以外の権利の終了的な発生・変更・消滅を生じさせてその履行という問題を残さない準物権行為

  そして、物権行為と準物権行為を合わせて処分行為と呼ぶこともあります。

 

Ⅲ.法律行為の効力

  法律行為は有効の場合に意思表示どおりの効果が認められ、無効の場合には効果が認められないのは言うまでもありません。

  法律行為の無効とは、

①意思表示の過程に問題がある場合(後の回で取り上げます)

②法律行為の目的が確定できない、または、不能な場合

③適法でない、または、社会的妥当性を欠く場合――です。

  まず、②の法律行為の目的が不確定な場合とは、例を挙げれば、車を売買する場合に「いい車を100万円で売る」という契約がなされた場合です。いい車とはどんな車かが不確定なので、民法ではその契約に拘束力を認めていません。法律行為が有効であるためには、目的の重要部分が確定されていることが必要です。この例だったら、いい車という表現でなく、「事故を起こしたことがなくて走行距離10000km以下の車」ように具体的に示せば有効となります。

  また、旅行会社と「原子力潜水艦に乗る海底旅行ツアー」の契約をしても、目的の実現は不可能です。もちろん、理論上は契約を有効とすることは可能なのですが、民法は記述のような目的が実現不可能な法律行為は無効としています。

  次に③の法律行為の目的が違法であったり、社会的妥当性を欠く場合は、民法では、その法律行為は公序良俗違反として無効になります。

公序良俗違反は、主に次の6つに類型化されます。

①犯罪に関わる行為

②取締規定に反する行為

③倫理的秩序に反する行為

④射倖行為

⑤暴利行為

⑥基本的人権を侵害する行為

民法52-2

  ①の犯罪に関わる行為は、例えば、対価を与えて犯罪を依頼するような犯罪契約などのような行為です。
②の取締規定に反する行為は、食品衛生法で禁止されている材料を入れた食品を製造し販売するような行為です。
③の倫理的秩序(人倫と言います)に反する行為は、妾契約が代表例です。
④の射倖行為は、賭博をするために資金を貸付ける契約のような行為です。
⑤の暴利行為には霊感商法などが該当します。
⑥の基本的人権を侵害する行為は、芸媚妓契約などです。

  こうした公序良俗違反の法律行為に対しては、その行為そのものをを禁止した規定が存在していない場合でも、法律行為自体を無効として効力を否定しています。

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