第50回 人の法律行為と行為能力

  人は生まれた時から等しく権力能力を持つと、前回までにお話しましたが、誰がどのような権利者であるかは、いろいろな要因で変化します。その要因の中で一番重要なのが契約に代表される法律行為です。そして、法律行為を単独で完全に行える能力を行為能力と言います。

  今回は、①未成年者の行為能力、②成年後見制度、③相手方の催告権――の順で、行為能力に問題があって1人で行う法律行為に制限がある人について勉強します。

 

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Ⅰ.法律行為をするためには行為能力が必要

民法50-1 

1)未成年者の法律行為

  個人の自由な意思で自らの社会生活関係を規律していく法律行為ですが、未成年者は通常、自由な意思に基づいて権利関係を作るには判断能力が不十分と考えられています。そこで、日常では保護者が一緒に法律行為を行っていますが、民法的に言うと、未成年者が有効な法律行為を行うためには、法定代理人の同意を得てから法律行為を行うことが必要であると言うことになります。未成年の場合の法定代理人は、親権者である父母がなるのが通常ですが、親権者がいなかったりこの財産の管理権を持っていないときは、未成年後見人(後で解説します)が法定代理人となります。

  未成年者が単独で法律行為を行っても、これは不完全な法律行為として、未成年者自身や法定代理人が取消すと、行った法律行為は無効となります。ただし、法律行為の相手が成年者である場合には、相手方からの法律行為の取消しは行えません。

  親権者などの法定代理人が持っている権利には、上述の①取消権のほか、②単独で行為をするよう同意をする同意権、③代わって行為を行う代理権、④単独で行った行為を有効なものと確定する追認権――があります。

しかし、例外として、単に権利を取得したり、義務を免れる行為については法定代理人の同意がなくても未成年者が一人で行えます。具体的には負担のない贈与を受けたり、借金の免除を受ける場合などで、本人に不利益を及ぼさない行為です。また、法定代理人から処分を許された財産は一人で処分できます(例えばお小遣いで、お菓子を買う)し、営業を許されれば営業行為は一人で行えます(例えば実家の商売を継ぐ)。そのほか、婚姻をした未成年は成年として扱われることになっています。

 

2)意思能力

  法律行為は個人の自由に基づいて行われるものですから、当然、自分の行為の結果を予測・判断できなければなりません。サッカー選手が「自分がAにパスを出したら、Aが相手をかわしてシュートする」と先を読んでプレーするのと同じです。先の予想・判断する能力を意思能力と呼び。この意思能力のない人の行った法律行為は無効となります。

  一方、法律行為を安定して一人で完全に行える能力を行為能力と言います。そして、意思能力や行為能力のない人、あるいは、不十分な人を制限能力者と言い、未成年や成年者で判断能力の欠けた人がこれに該当します。

  制限能力者は、判断能力が不十分なので、保護するためにその行為を後から取消すことができることになっています。

  このほかの民法上の人の能力には、責任能力、受領能力――などがありますが、後述します。

 

Ⅱ.判断能力に問題ある人は保護される

  民法では、一定の人に対して、行った行為をなかったことにする取消しという権利を与えています。もっとも、だまして行った行為は、なかったことにはできません。この制度は制限能力者制度と呼ばれ、現行法では、前述の未成年者のほかに、成年者では①被後見人、②被保佐人、③被補助人――の3つの類型を設けています。

民法50-2

1)成年後見制度

  成人になっても、精神上の障害で判断(事理弁識と言います)する能力が常に欠けている人は、本人や配偶者、一定の範囲の人の請求で、家庭裁判所に後見開始の申立てを行い審判で認められると、成年被後見人になります。そして、成年被後見人の行った日常生活以外の財産行為はすべて取消すことができます。つまり、成年被後見人の法律行為を完全に有効にするためには、成年後見人に代理してもらうことが必要と言えます。

  後見開始の審判がなされると、戸籍とは別に専用の後見登記等ファイルが作成されます。後見登記等ファイルを作成する目的は、取引の相手方が本人の後見開始の有無を知ることにあります。言い換えれば、相手方が後からの取消しによって、思わぬ損害を受けることを防ぐためと言えます。

2)保佐人

  精神上の障害で、常に判断能力が欠けるほどではないものの、著しく不十分な人は、家庭裁判所が、本人、配偶者その他一定の範囲の人の請求で保佐開始の審判を行うことで被保佐人となります。被保佐人になると、重要な財産行為を行う場合には保佐人の同意が必要になります。重要な財産行為とは、①元本の領収・利用、②借財・保証、③不動産などの売買、④訴訟行為、⑤贈与・和解・仲裁合意、⑥相続の承認・放棄、遺産の分割――です。これらについて同意がない場合は取消しの対象となります。

3)補助人

  精神障害のため物事の理解が不十分で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた人は、被補助人として、重要な財産行為の一部については補助人の同意がない場合は、取消すことができます。補助人は、補助開始の審判の際に家庭裁判所により選任されます。

 

Ⅲ.相手方の催告権

  以上のようにいったん行われた法律行為が、精神上の問題とはいえ簡単に取消されると、相手方にとっては、はなはだ迷惑な話です。不利益を被ることも否めません。

  そこで、こうした相手方の不安定な立場への配慮から、民法は相手方に、取消すか取消さないかの態度をはっきりさせるよう促す権利を与えました。この権利が催告権です。この催告に対しては、制限能力者の法定代理人が何の応答もしない場合には、制限能力者は与えられた取消権を失って、行った法律行為は完全に有効になります。

  ただし、被保佐人、被補助人に対する催告で、応答がない場合には取消したと見なされますので、ここはその違いをしっかり覚えておいてください。

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