第48回 民法を学ぶに当たって

  前回に民法は、社会生活をする上でのルールとお話ししましたが、今回は、行政書士試験に臨むためには、どう学んでいったらいいかを少しお話したいと思います。
まず、民法の原則と体系をつかんでから、それぞれについて解説していきます。行政書士試験で直接問われる内容ではありませんので、細かいところは気にせず、ここでは民法の全体像をつかむようにしてください。

 

Ⅰ.私的自治の原則

  私たちは、いつも自分の自由な意思で行動しています。それは、民法というルールで定められた社会生活上の法律行為を行う場合も同じで、自分の自由な意思で物を売ったり買ったりできます。サッカーのピッチに立ったら、その後は自分で判断してパスやドリブルをしたり、シュートするのと似ていますね。

例えば、自分で所有しているカメラを他人に売る場合には、誰に売るとか、いくらで売るとか、いつ売るとか、売買契約書をきちんと交わすかとか……そういった内容は、すべて自分で決めればいいわけです。

このような考え方を私的自治の原則といいますが、民法という法律の大前提です。

 

Ⅱ.民法の体系

  契約は自由だと言いましたが、実際に契約しようとすると、最低限のルールやお互いの意見が合わなかったときはどうするかとか、決めておかなければ成り立たないことはご承知のとおりです。サッカーで、どういう時に点になるとか、どういう行為は反則とか……決めるのと同じです。

  1000以上の条文を持つ民法ですが、実は、きちんとした体系を作って成り立っています。

民法48-1

  民法では、まず、第1条から174条までの総則で最低限のルールを規定しています。行政書士試験としてのこのテーマでの学習の中心は、①制限行為能力、②意思表示、③代理、④時効――になります。

  次に、第175条から398条までに財産法の中の物権について規定しています。物権での学習のテーマの中心は、①不動産物権変動、②占有権、③担保物権――です。

  もう1つの財産法は債権で、第399条から724条に渡って規定しています。債権の学習の中心テーマは、①債務不履行、②債権の保全、③債権の消滅、④多数当事者の債権債務関係、⑤契約、⑥不法行為――です。

  そして、家族法は1つが親族法で、第725条から881条に規定されています。学習テーマの中心は、①婚姻、②離婚――です。

  最後に家族法のもう1つは相続法で、学習テーマの中心は、①相続、②遺言――です。第882条から1044条に規定されています。

 

Ⅲ.総則

  民法総則は、これから出てくる各編の共通ルールを(通則と言います)定めたものです。でも、多くは財産関連の規定で、現行では多くの特別法が規定されていて特別法が優先されると決まっていることから、あまり適用されない規定も存在します。

民法48-2

1)通則

  民法の基本原則と解釈基準を定めています。

2)人

  権利の主体である人について定めています。主体とは、私権を享有する者という意味です。

3)法人

  人とともに権利の主体となる法人について定めています。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」や「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の制定(平成20年12月1日施行)に伴って、民法34条などの公益法人に関する規程が削除されました。

4)物

  権利の客体(対象となるもの)について定めています。物についての定義に始まり、動産、不動産といった分類がなされ、それぞれの定義も規定されています。

5)法律行為

  法律行為とは、権利の得喪変更を生じる合法的な行為のことで最も重要なものです。総則編以外でも、権利の得喪を生じる規定は多くあるので、ここでは、すべてに通じる通則を定めています。

6)期間の計算

  期間とはある時点からある時点までの継続した時の長さのことで、権利の得喪に重要な作用をします。

7)時効

  時効は時の経過が権利の得喪をもたらす制度で、「取得時効」「消滅時効」について定めています。

 

Ⅳ.物権

  物権編では、物権の対象、種類、効力、変動から各種の物権の内容と効力、そして、これらの権利の設定・移転について定めています。つまり、人が財産である物に対して、どのような権利を持つかを定めているのが物権編と思ってください。

民法48-3

1)総則 

  すべての物権に共通する決まりで、物権の種類、設定、移転などについての規定があります。

2)占有権

  占有とは、一定の物を所有している状態のことを言い、この状態をそのまま権利として認めたものが占有権で、占有権の取得や消滅について学びます。

3)所有権

  所有権は物を完全に支配し、利用することができる権利です。他の権利は、物を一定の期間、一定の方法で支配する権利ですが、所有権は全面的で完全に支配する権利です。

4)地上権

  地上権は、設定行為を行うことで、他人の土地に建物を建てたりしてその土地を使うことができる権利です。一見すごく似たものに賃借権がありますが、賃借権は債権ですので、注意が必要です。

5)永小作権

  永小作権も地上権と同じように設定行為で、他人の土地を使う権利ですが、その目的が土地の耕作、牧畜のためと決まっています。

6)地役権

  地役権も設定行為により、自分の利益のために他人の土地を使用する権利です。自分の土地に行くために他人の土地を通ったり、他人の土地から水を引く場合などがあります。

7)担保物権

  社会生活の上で、賃金や代金の回収のためなどに、一定の物を担保とすることが日常的に行われています。これには、①留置権、②先取特権、③質権、④抵当権――の4つがあります。

また、このほかに利用されているものに、⑤譲渡担保、⑥代物弁済予約――があります。

 

Ⅴ.債権

  債権編は、債権総論と呼ばれる総則で、主に債権の効力について、債権各論と呼ばれる総則以下で、債権の発生、変更、消滅などについて定めています。

民法48-4

1)総則

  債権一般に通じる原則について規定しています。内容は、①債権の目的、②債権の効力、③多数当事者間の債権関係、④債権の譲渡、⑤債権の消滅――の5項目です。

2)契約

  物の売買を考えた時、当事者間の契約で権利義務関係が発生することが分かると思います。こうしたことから、債権の発生を目的とする債権契約についての契約の成立や効力、13種類の契約についての詳細な規定がなされています。

3)不当利得

  契約によらないで、債権が発生することもあります。不当利得もその一つで、正当な理由がないのに一方が得をし、もう一方が損をする場合のことです。これは不公平なので、返す義務(不当利得返還義務)があると定められ、債権の一つ返還請求権が発生します。

4)不法行為

  不法行為も契約によらない債権の発生の一つです。不法行為とは、故意又は過失により他人の権利または利益を侵害して損害を与える違法な行為のことです。加害者は損害賠償責任を負うことになります。債権関係で言えば、被害者の加害者に対する損害賠償請求権という債権が発生します。

民法48-5

 

Ⅵ.親族

  親族の範囲から婚姻・親子・親権・後見・扶養といった身内のことに対して規定されています。

民法48-6

1)総則

  総則では、親族の範囲、親族の関係の発生、親族関係の終了などについての定めがあります。親族は6親等内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族を指します。

2)婚姻

  婚姻は男女の合意によってのみ成立します。ただし、婚姻適齢など婚姻成立の要件があります。また、婚姻の成立で発生する効力や夫婦の財産はどうなるのか、離婚した場合などについて定めがあります。

3)親子

  親子には実子と養子があり、さらに実子には嫡出子と非嫡出子があり、嫡出子否認や認知などの問題があります。また、養子にも普通養子と特別養子があることや、離縁についての規定もされています。

4)親権

  親権は親が未成年者の子に対して持つ、子の保護を目的とする権利義務です。これには、監護教育権、財産管理権があります。

5)後見

  後見には、親権を行う父母がいない場合の未成年者後見と精神上の障害により判断能力に問題がある場合の成年後見、保佐、補助の制度があります。

6)扶養

  扶養は、一定の親族に、困窮者に対する金銭的給付などを義務付けた制度です。夫婦親子間では生活保持義務、兄弟姉妹間では、生活扶助義務があります。

 

Ⅶ.相続

  相続編では、相続の開始から相続人、相続の効力、相続の承認や放棄などの相続に関する規定と遺言について定めています。

民法48-7

1)総則

  相続はいつ、どこで始まるのか、相続人の権利が侵されたときにどうすればいいのか。遺産の管理に必要な費用はどこから支出されるのか、などについて定めています。

2)相続人

  死亡した人(被相続人)に配偶者と子がいる場合は、その子が配偶者とともに第一順位の相続人となります。そして、子がいない場合は……、と第三順位まで決められています。こうした相続権の規定のほか、相続権を失うのはどんな場合かなどについても定めています。

3)相続の効力

  相続の一般的効力、共同相続、相続分、寄与分、遺産分割の仕方などについて定めています。

4)相続の承認・放棄

  相続は権利であって義務ではありません。そこで、相続を承認すること、又は放棄をすることができます。ただし、相続財産の一部を使ってしまった場合などは相続を承認したと見なされます。

5)財産の分離

  相続人が財産相続を単純相続すれば、遺産と相続人の財産とが一緒になってしまうのが普通ですから、相続人あるいは被相続人の債権者は思わぬ損害を被る場合があります。こうした場合に債権者の請求で遺産と相続人の財産とを区分けする(分離)ことを財産の分離と言い、民法で規定されています。

6)その他

  相続編では、相続人の不存在の場合の財産の帰属、遺言の仕方及び効力、さらには相続人にこれだけは残さなければならない遺産である遺留分についての定めを行っています。

 

Ⅷ.学習上の注意点

  行政書士試験の中で民法は、単純タイプの出題ではなく、事例タイプで出題されることが多いです。そのため、知識として覚えることももちろん大事ですが、事例ごとに自分で考えて事例処理ができるようになることが大切です。

  そのためには、事例に登場する人物のどちらを保護することが妥当なのかを考えながら読んでいきましょう。そして、解説と比べて、自分が用いた知識(条文)が適当だったのか、解説はどの知識を用いて解いたのか、自分にどのような知識が足りなかったのか――などを意識して、学んでいってください。

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