第38回 国会議員の地位とは

  国会についての最終回は、国会議員の地位を①任期、②兼職の禁止、③特権――に分けて解説します。

憲法38-1

 

Ⅰ.任期

憲法38-2

  憲法45条は衆議院の、46条は参議院の議員の任期を規定しています。衆議院議員の任意は原則4年、ただし、衆議院の解散があった場合は解散した時までです。一方、参議院の任期は6年で、3年ごとに議員の半数について改選します。衆議院よりも任期が長く、常に議員の半数は存在すること、解散制度もないことは、参議院議員には、継続性と安定性が確保されているということです。

  国会議員が選挙によって選ばれて身分を取得するのは、当選の効力が発生した日です。一方、国会議員が身分を喪失する場合は次の9つの場合です。すべて覚えてください。

①任期が満了した場合

②他の議院の議員になった場合

③資格争訟の裁判で資格がないことが確定した場合

④懲罰として除名された場合

⑤被選挙権資格を失った場合

⑥辞職した場合

⑦法律上兼職が禁止されている公務員になった場合

⑧訴訟で選挙無効又は当選無効の判決が確定した場合

⑨衆議院が解散した場合(衆議院議員のみ)

 

Ⅱ.兼職の禁止

憲法38-3

  ある議院の議員である者は原則として、同時に他の議院の議員になることはできません。両議院が同じ議員から構成されたのでは、二院制の趣旨が失われてしまうからです。48条では単に「議員たることはできない」としているだけですが、公職選挙法では、議員に在職中の者が他の議院の議員選挙に立候補すること自体を禁止しています。また、地方自治法や国会法によって、他の議院の議員だけでなく、他の公務員との兼職も原則として禁止されています。

 

Ⅲ.特権

  国会議員には、

①歳費受領権

②不逮捕特権

③免責特権――の3つが与えられています。

 

1)歳費受領権

憲法38-4

  憲法49条により国会議員には国庫から歳費を支給される権利が保障されています。これは、普通選挙では、あまり財産のない一般国民が議員になることがあり得るため、そういった人も議員として活動できるためであると理解されています。

  本条を受けて国会法で歳費の額を「一般職の国家公務員の最高額より少ない額」の範囲で決めると規定されています。裁判官の報酬は憲法上減額されないことが保障されていますが(後で79条6項、80条2項で学びます)、議員については、そういった保障はありませんので、国会法の改正で減額されることもあり得ます。

 

2)不逮捕特権

憲法38-5

  憲法50条は、国会議員の不逮捕特権について2つ規定しています。

①国会議員は、原則として会期中は逮捕されない

②会期前に逮捕された国会議員がいる場合、その所属する議院の要求があれば、会期中釈放しなければならない

   ①の場合「会期中」とは国会の開会中のことです。休会中でも会期中であることに変わらないので不逮捕特権は認められます。また、参議院の緊急集会も国会そのものではありませんが、開催されている間は不逮捕特権が認められます。

   また、「逮捕」には、刑事訴訟法にいう①逮捕、②勾引、③勾留と、行政庁の行う④身柄拘束――のことで、訴追することまでは含まないと理解されていますので、身柄を拘束しない形の起訴は行えることになります。

  また、50条にある「法律の定める場合」の例外には2つあります。

①院外における現行犯罪の場合

②その議員が所属する議院の許諾がある場合

  ①の場合の理由は、院外における現行犯逮捕は、犯行が明白で不当な逮捕のおそれがないからです。

  ②の場合は、議院が許諾してよいかどうかの判断基準が2つ挙げられます。

➊正当な理由があるか

  不逮捕特権の趣旨は、政府の権力によって国会議員の職務遂行が不当に妨害されることがないよう、議員の身体的な自由を確保する必要があることによります。

➋議院の活動に支障が出るか

  不逮捕特権の趣旨は、個々の議員というよりは議院の正常な活動を確保することにあることによります。

 

3)免責特権

憲法38-6

  憲法51条は、両議院の議員について、議院で行った演説等について院外で責任を問われないことを保障しています。そして、これを免責特権と言います。免責特権を国務大臣にも認めるかについては、国務大臣については明示されていないので認めないというのが通説です。
つまり、国会議員である国務大臣の発言は、国会議員としてのものならOKですが、国務大臣としての演説や発言は責任を負うというわけです。

  また、「議院で行った」というのは、「議員活動の場面で国会議員としての職務を行うに当たって」という意味です。例えば、委員会活動や地方での公聴会などが議員としての活動なら、国会の会期中であろうとなかろうと、場所がどこでも免責特権が及びます。逆に、議院で行った発言を本にまとめて出版したような場合は、もはや議院で行ったとは言い難く、免責特権は及びません。

  ここいう、「責任」については、一般国民であれば問われる民事上・刑事上の法的責任を指します。例を挙げれば、議員Aが議員Bの名誉を傷つけるような批判を国会内でした場合、一般国民であれば名誉棄損行為として損害賠償責任を負ったり、名誉毀損罪に問われたりしますが、議員であるAは、それらの法的責任は問われないのです。弁護士出身の国会議員の弁護士法に基づく懲戒も法的責任の追及ですので、責任に含まれます。

  一方、マスコミが議員の言動に対して批判を行うことなどは、政治的責任の追及ですので、免責特権の対象にはなりません。

 

  ここまで読むと、国会議員はずいぶん優遇されているように思われるかもしれません。しかし、51条の趣旨は、議員が自由に討議することで国政に多様な意見が反映され、ひいては国民の利益になると考えたからです。

  では、国会議員が、議院で一般国民の名誉やプライバシーを侵害するような言動を行った場合にも、免責特権は及ぶのでしょうか。
これを示した事件と判例を次に挙げます。

憲法38-7

  この判例では、国会議員の一般国民の名誉を棄損するような言動について、法的な責任追及はできないし、その言動の目的は国会議員の職務として合理的であるので損害賠償の対象でないとしています。

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