第35回 日本の二院制とは

  国会の2回目の今回は、国会の二院制と衆議院の優越について解説します。

憲法35-1

Ⅰ.二院制 

憲法35-2

  憲法42条は、  我が国の国会が衆参両議院によって構成されるという二院制の採用を明らかにしています。

  二院性は世界各国で明らかにされていますが、その内容はそれぞれの国の歴史や二院性を採用した趣旨などによって異なります。

  各国の二院性は、3つの類型に分かれます。我が国の憲法に直接かかわる事項ではありませんが、我が国の二院制を確かめる手がかりとなるので、少しだけお付き合いください。

1)貴族型

  民選の第一院と非民選の第二院とで議会(国会)を構成し、貴族院である第二院はその国の貴族的な要素を代表するとともに、第一院に対して何らかの抑制を加えようとするものです。イギリスの二院性や、戦前の我が国明治憲法下で採用された二院性がこれです。

2)連邦制型

  連邦制を採用する国においては、国民全体を代表する第一院のほかに、その国を構成する連邦(アメリカにおいては各州)を代表する議員から成る第二院の存在も認められる制度です。アメリカのほか、インド、オーストラリアなどの二院性がこの類型です。

3)民主的第二次院型

  貴族制度が存在せず、連邦制でもない国では、一院制を採用しても差し支えないようにも思われますが、一方の院が他方の院に軽率な判断がないかをチェックするために、二院性を採用するケースがあります。現在の我が国の二院制はこの類型に属します。イタリアやベルギーなどもこの類型です。

 

  さて、ここからが本題です。我が国の二院制が民主的第二次院型であることは、上記のとおりですが、その趣旨には、①一方の院が他方の院をチェックすることのほか、②上院(参議院)が下院(衆議院)と政府のクッションになること、③民意をよりきめ細やかに反映すること――などが挙げられます。

  国会議員の任期は、衆議院議員が4年制でしかも解散制度によってその前に任期を終了する可能性もあるのに対し(45条)、参議院議員の任期は6年間で3年ごとに半数ずつ改選され、解散制度はありません(46条)。
この意図は、民意のきめ細かな反映を目指しつつ、参議院議員の身分を衆議院より安定させ、参議院の衆議院に対するチェック機能を有効にしようとしているところにあります。もっとも、現在のように、衆議院と参議院の多数政党が異なると、参議院や衆議院と政府の緩和剤となるという機能はあまり期待できませんが…。

 

  民主的第二次型の二院制である我が国の議会には、①両院独立活動の原則、②両院同時活動の原則――という2つの原則があります。

両院独立活動の原則とは、衆参両議院はそれぞれ独立して議事を行い議決するという原則です。合同して議事を行い議決したのでは、わざわざ二院制をとった意味がありませんから当たり前の原則なのですが、衆議院で可決された法律案が参議院で否決された場合などに開かれることがある「両院協議会」はこの原則の例外なので覚えておきましょう。

両院同時活動の原則とは、衆参両議院は同時に召集され、同時に閉会するという原則です。衆議院が解散した場合には参議院も閉会するという54条2項の規定もこの原則からきています。この原則は、両院がバラバラに活動したのでは参議院のチェック機能が生かせないという二院制から当然に導かれるものと言えます。衆議院解散中の参議院の緊急集会はこの例外ですので覚えてください。

 

Ⅱ.衆議院の優越

  権限の面に着目すると、衆議院と参議院はほぼ対等の関係にあります。しかし、①法律案の再度の議決、②予算の議決、③条約の承認、④内閣総理大臣の指名――において、衆議院の参議院に対する優越が認められています。

  憲法が衆議院の優越を認めているのは、議院の任期や解散制度の有無などから、衆議院の方がより民意に近いと判断できることや、両院をまったく対等に置くよりも、安定した政治が期待しやすいことによると考えられています。では、①~④の内容を個々に見ていくことにします。

1)法律案の再度議決の優越

憲法35-3

  法律案とは、国会によって制定されるべき法律の原案として議院の審議に上げられるもののことを言います。この法律案が法律として成立するには原則として、両議院の可決が必要です(1項)。1項にある「特別の定がある場合」には、①両議院の可決がなくても成立する場合と②両議院の議決に加えて他の要件が必要な場合――の2種類があります。

  ①の場合はさらに2つあります。一つは、2項で定められている、衆議院で可決→参議院で否決→衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で可決――した場合が挙げられます。この場合には衆議院の再議決のみで法律が成立するという衆議院の優越の原則が採用されます。衆議院で可決→参議院で60日以内に議決しない→衆議院の再議決(4項)でも法律が成立します。

  もう一つは、参議院の緊急集会(54条)で、この場合も参議院の意思のみで国会の権能を果たせるので、憲法に明記されてはいませんが当然に法律が制定されると理解できます。ただし、この場合、次の国会の開会後10日以内に衆議院の可決を得なければ、効力を失うことになります。

  ②には、地方自治特別法があります。地方自治特別法は、両議院の議決だけでなく、その特別法の適用される地方の住民投票において過半数の同意が得られなければ法律は成立しません。

  59条3項で規定しているのが両院協議会で、両院の議決が異なった場合にその妥協を図るために設けられる機関です。もっとも、衆議院が両院協議会の開催を求めることを妨げないと規定されているのであって、必ず開かなければならないわけではありません。

 

2)予算案の議決の優越

憲法35-4

  予算とは、一会計年度における国の歳入歳出の予定的見積りを内容とする国の財政行為の準則のことです。予算は内閣が作成して国会に提出しますが、60条1項により衆議院が先に審議する予算先議権を有します。

  予算も法律と同様、両議院の可決で成立するのが原則です。しかし、①衆議院で可決→参議院で否決→両院協議会(法律案と異なり必ず開かれます)でも意見が不一致の場合、②衆議院で可決→参議院受け取り後、国会休会中を除き30以内に議決しない場合――のいずれも衆議院の議決が国会の議決となり、予算が成立します。
①の場合において衆議院の再議決は不要、②の場合において60日ではなく30日以内とされている――これらから、法律案よりもさらに衆議院の優越が強く認められていると言えます。

 

3)条約の承認の優越

憲法35-5

  条約を締結するに当たっては、国会の承認が必要ですが、その承認には、60条2項の予算の議決についての衆議院の優越が準用されます。なお、60条1項は準用されませんので、衆議院の先議権はありません。

 

4)内閣総理大臣の指名の優越

憲法35-6

  67条では、内閣総理大臣は国会の議決で指名されることが規定されています。内閣総理大臣がいないままで国政を遂行することはできないので、内閣総理大臣の指名は他の案件に先立って行われます。

  内閣総理大臣の指名も、両議院がそれぞれ議決し、それらが一致して国会の指名の議決となるのが原則です。

  しかし、①両議院の指名が異なり、両院協議会を開いても(必ず開く)意見が一致しない場合、②衆議院の指名後、国会休会を除いて10日以内に参議院が指名しない場合――には、衆議院の議決が国会の議決となります。

  なお、衆議院の優越を表にまとめました。表を参考にすべて覚えてください。

憲法35-7

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