第34回 権力分立と国会について

  今回から、日本の統治機構について憲法を読みながら勉強していきます。行政書士試験でも、国会・内閣・裁判所のいずれの機関についてもよく出題されます。

前回までの人権では、条文に書かれている内容の意味や解釈の仕方とそれに関する判例を覚えていくことが大切でしたが、これからは、条文の暗記、つまり、条文を覚えていく作業が重要となってきます。もちろん、丸暗記をしてください、というのではなく、キーポイントとなる語句をしっかりと捉えていってくださいということです。

  また、条文を読む際に2つのポイントで、捉えることも必要です。①は、「何(誰)がどんな仕事をしているか」といった視線で捉えます。②は、「どうしてか?」と常に考えながら見ていくことです。例えば、「議員の資格争訟の裁判は議員で行う」という55条ですが、①の視点からなら、条文をそのまま読めばいいのですが、②の視点から見ると、「議院の自律性尊重という観点から、司法権なのに裁判所ではなくて議員が行う」と読めるわけです。

  さて、手始めは、国会です。ですが、国会の勉強に入る前に、権力分立(三権分立)について、中学校で習った内容をちょっと復習したいと思います。三権分立とは、フランスの政治思想家モンテスキューが提唱した権力分立の考え方で、近代国家の多くで採用されています。
その内容は、国家権力が1カ所に集中することによる権力の濫用や暴走を防ぐため、権能を立法権、司法権、行政権にそれぞれ独立して行使させ、お互いを監視し合うことによって健全な働きをさせる仕組みです。

  憲法では、立法は国会が、行政は内閣が、司法は裁判所がそれぞれ担当するものと、それぞれ、41条、65条、76条で規定されています。

憲法34-1

  今回は、手始めとして国会の地位について解説します。憲法では41条と43条に規定された内容です。

 

Ⅰ.国民の代表機関

憲法34-2

  43条1項は、衆参両議院は全国民を代表する国会議員によって構成されるということを規定しています。これは、権力は国民の代表者が行使すると謳っている憲法前文と相まって、憲法が間接民主制を採用することを明らかにしたものです。

  まず、「代表」とはどのような概念なのかというと、通説では、選挙によって表明される国民の多種多様な意思が、できるだけ国会にも反映されるべきだということを意味していると言われています。このような意味での代表のことを「社会学的意味の代表」と言います。

  次に、「全国民を代表する」についての憲法上の意味ですが、次の2つの内容を持った自由委任(代表委任)の原則があるというのが通説です。

①国会議員は、選挙方法のいかんを問わず、すべての国民を代表する者として、すべての国民のために活動すべきである。

②国会議員は、自分の選挙区の選挙人の個別具体的な指示に法的に拘束されることなく、自分の良心に基づいて自由に意見を表明し、議決する権利を有する。

  ところで、43条1項が、自由委任の原則を表明しているものとすると、①政党がその政党に所属する議員を、政党の政治的方針である党議で拘束すること、②比例代表制選挙で選出された議員が、その政党を離脱した場合には議員の資格を失うものとすること――が、自由委任の原則に違反しないか問題になると思いませんか? 次にそれぞれの通説を解説します。

 

1)党議拘束の問題

  通説では、まず、党議に反する言動を行った議員を党から除名することは自由委任の原則に違反しないと理解されています。政党は、国民がその政治的な意思を国政に反映させるための最も有効な媒体の一つと考えられます。そこで、党議に従うことが代表という概念に当たることになるからです。

  しかし、党議違反を理由に国会議員としての資格まで喪失させることは認められていません。それは、政党からの除名は政治的責任の追及の範囲ですが、国会議員の資格の喪失は法的責任の追及となり、自由委任の原則に触れるからです。

2)比例代表制と党籍離脱の問題

  これには、①議席喪失説、②議席保有説――2つの相反して、かつ、どちらも有力な説があります。

議席喪失説では、比例代表制とは政党に着目した選挙方法だから、比例代表で選ばれながら、その政党を離脱した議員については、国会議員の資格を喪失させることが、国民の意思をより忠実に反映させると考えます。

一方、議席保有説では、自由委任の原則では、選挙方法のいかんにかかわらず、一旦選出された以上は、全国民のために活動すべきなのが議員ということになりますから、国会議員の資格を失うことはできないし、仮に、選挙後に党議自体が変更された場合なら、党議変更に反対して党から離脱した国会議員の方が国民の意思に忠実であると考えます。

これについては、どちらが通説という結論づけはできていません。

  次に、43条2項の議員定数については、公職選挙法により衆参両議院の議員定数が定められています。現在のところ、衆議院の議員定数は480人(小選挙区300人、比例代表180人)、参議院の議員定数は242人(選挙区146人、比例代表96人)となっています。

 

Ⅱ.唯一の立法機関

憲法34-3

  41条では、まず、国会を「国権の最高機関」と謳っています。ここでの国権とは、一般に立法権、行政権、司法権など、統治活動をする様々な権力の総称を指すと考えられています。

  最高機関については、①統括機関説、②政治的美称説――の2つがあります。

統括機関説とは、法的な意味も含むという考えで、行政権(内閣)と司法権(裁判所)など他の国家機関は国会の下位に置かれて、国権の発動の仕方について国会の意思に従わなければならないとする考え方です。

  一方、政治的美称説とは、国会が国民の代表者たる議員によって構成されることを踏まえて、国会が重要な機関であることを宣言したに過ぎず、法的な意味は認められないという考え方です。

  2つの説を比べ、日本国憲法が採用している三権分立制度を考えたとき、立法権、行政権、司法権の3権が互いに拮抗することで国家権力の横暴を防ごうとしているわけですから、②の政治的美称説が現在の通説となっているのです。

  41条は次に、国会は国の唯一の立法機関と謳っています。これは、国会が立法権を独占することを宣言して、行政権についての65条、司法権についての76条1項と合わせて、三権分立を明らかにしています。

  また、唯一の立法機関であることは、①国会中心立法の原則、②国会単独立法の原則――の2つの原則を意味します。

 

1)国会中心立法の原則 

  国会中心立法の原則とは、国が行う立法は、憲法に特別の定めがある場合を除いては、必ず国会で行わなければならない――という原則です。これは定義なので覚えてください。

この国会中心立法の原則で特に議論されるのは、委任立法(委任命令)がこの原則に違反しないかということです。委任立法とは、法律がその法律で定めるべき事項について、他の国法形式(特に行政権による命令)に委任することです。
例えば、国家公務員法は、国家公務員の政治的行為を制限する際、具体的に制限される政治的行為を何にするかについて、人事院の命令(人事院規則)に委任しています。

委任立法は、①委任立法を認めないのは非現実的であること、②憲法73条6号但し書で、「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」とあるので、法律の委任があれば命令の一種である政令によって罰則を設けることも可能ということ――2つの理由で、現在の解釈では可能であるとされています。

しかし、まったく無制限に委任立法を許したのでは国会中心立法原則が骨抜きになってしまいます。そこで、次の3つの制限が付されています。

①基本的な事項は法律で定めなければならず、包括的な委任、白紙委任は認められない。

②憲法上、国会に権限があることが明記されている事柄については、特に解釈上の根拠がない限り委任は認められない。

③委任立法が、法律が委任した範囲を逸脱したかどうかの判断権は国会にある。

 

2)国会単独性の原則

  国会単独性の原則とは、国会の立法手続きには、国会以外の機関の参与を必要としない――という原則です。この定義も覚えてください。

  この原則に関しては、現行の内閣法が内閣に法律案提出権を認めていることが、この原則に違反しないか問われることがあります。①憲法72条で謳っている議案に法律案も含まれると解釈するのが一般的であること、②閣僚の大半は国会議員であり、国会議員には法律案提出権があること、③たとえ内閣に法律案提出権を認めたとしても、国会はその法律案を自由に修正したり否決したりできること――などから、内閣に法律案の提出権を認めることは国会単独の原則に違反しないと考えられます。

  なお、95条に規定されている「一の地方公共団体にのみ適用される特別法」については、国会の議決だけでなく、その地方公共団体の住民投票による同意が必要とされているので、これは憲法が認める国会単独立法の例外です。

 

  また、別の視点で「唯一の立法機関」を見たとき、立法という言葉の意味には①形式的な意味と②実質的な意味――とがあることに注意が必要です。

  形式的な意味の立法とは、その内容にかかわらず、国会の議決によって成立する国法の一形式としての法を制定することです。つまり、○○法という法律の名前が付いているということです。

  これに対して実質的な意味の立法とは、法規という特定の内容の法規範を制定することです。そして、41条でいう立法とは実質的な意味です。なぜなら、もし、形式的な意味の立法であるとすると、本条が「国会は法律という名の法を成立させることができる」という、内容のない当たり前のことを宣言しただけになってしまうからです。

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