第32回 在日外国人にも人権はあるの?

  今まで学んできた「国民の権利及び義務」は憲法第3章に規定されていますが、最後に、この32回で外国人、次の33回で法人――について特別に取り上げます。なぜ、特別に取り上げるのか疑問に思われるかもしれませんね。

なぜなら、今回の外国人については、第3章のタイトルに「国民の…」と記載されているし、第11条のも「国民は…」から始まるので、外国人の人権は保障されなくていいか、という疑問が沸いてくるからです。しかし、人権は国家や憲法で与えられているものではなく、人間が人間として生まれてきたら当然にあるものとも勉強しましたね?(第6回です)

日本人と日本に住んでいる外国人に、人種による差別はあるのでしょうか? 
周りを見てみましょう。選挙の投票所で外国の方を見かけますか? 出入国の際の審査は日本国民と同じなのでしょうか? 国民年金を外国人で受給している人はいるのでしょうか? そんな疑問がたくさん出てきます。

そして、それを裏付けるように、在日外国人が関係する重要な事件もたくさん存在し、その判例は、行政書士試験でもよく取り上げられます。そこで、外国人について、まとめて勉強しちゃおう!というわけです。

  日本憲法は自然権思想の立場に立っているとともに、国際協調主義をとっています。これは、憲法前文と98条に明示されています。そこで、基本的には、外国人にも人権は保障されていると考えられています。正確に言うと、憲法によって保障されている人権は、その性質を検討して、日本国民にだけ保障されていると考えるべき人権を除いて外国人にも保障されていると言えます。これを性質説と言いますが、分かりやすく言い換えると、人権によってはその性質上、外国人には保障されないものや、保障されるけれど日本国民と同等には保障されない人権もある、と言うことです。

そこで、裁判で外国人にも保障されるかが問題となった人権について、いくつか見ていきましょう。

 

Ⅰ.入国の自由

  通説では、外国人の入国の規制については国際慣習法上、国家の裁量に委ねられているので、外国人の入国の自由は憲法上保障されていません。それでは、それに関する「マクリーン事件」を見てみましょう。この事件では、①そもそも外国人に人権保障が及ぶのか、②及ぶとしたら、政治活動を行う自由や在留の権利は保障されているのか、③法務大臣のした更新拒否の処分は憲法に違反しないか――の3つの争点があります。

憲法32-1

  判例では、性質説を採用し、憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると理解されるものを除き、日本に住む外国人にも等しく及び、政治活動の自由についても、日本の政治的意思決定や実施に影響を及ぼさないと思われるものについては保障が及ぶことを認めています。 

 

Ⅱ.政治活動の自由

  政治活動の自由は、表現の自由(21条1項)の一環をなすものでしたね。通説は、性質説を前提に、外国人にも政治活動の自由は保障されるけれども、それは我が国の政治問題に関する不当な干渉に渡らない限度にとどまる――ものとしています。

 

Ⅲ.参政権

  通説では、少なくとも国会議員選挙などの国政レベルでの参政権については、国民主権の原理に従い、日本国民にのみ保障されることとなっています。これは、公職選挙法に規定されています。

  一方、地方公共団体レベルでの参政権については、外国人に参政権を保障することは可能である、という許容説を判例では示しています。これを示す事件が「定住外国人の地方選挙権」の判例です。この事件は、外国人には選挙権が保障されているかが争点でした。

憲法32-2

Ⅳ.公務員になる権利

  公務員になることのできる権利を公務就任権と呼びます。外国人に公務就任権が保障されるかについては、政府見解としては、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または国家の意思形成への参画に携わる公務員となるためには、日本国籍を必要とする――としています。

  判例によれば、下記の定住外国人の地方選挙権をめぐる事案では、当然の法理ではなく、国民主権の原理を根拠に、憲法は外国人に地方公共団体の管理職に就任する資格があるとはしていない(回りくどい言い方ですね)――としています。その上で、具体的な管理職の任用の在り方については各地方公共団体の裁量に委ねられていて、日本国民に限って管理職に昇任することができるという措置をとることは、合理的な理由で日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別しているので、憲法14条1項にも、労働基準法にも違反していないと言っています。

憲法32-3

  なお、この判決には、特別永住者*については、管理職への機関を与えないことは違憲であるという反対意見が付いていますので、これも覚えておいてください。

   *【特別永住者】昭和20(1945)年の敗戦以前から日本に住み、昭和27(1952)年サンフランシスコ講和条約により日本国籍を離脱した後も日本に在留している台湾、朝鮮半島出身者とその子孫のことです。

 

Ⅴ.社会権

  社会権の保障については、かつては、外国人は国籍国から保障されるのが当然という考え方もありました。

  現在では、限られた財政状況の下では、外国人より日本国民を優先した社会保障制度がとられても許されるけれども、少なくとも生存に直結するような最低限のレベルにおいて、外国人の社会権を保障することは憲法の理念に合っていると理解されています。

  判例は、社会保障政策上、外国人をどのように取り扱うかについては、国の政治判断、具体的に言うと国会の立法判断――に委ねられるとしています。

憲法32-4

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