第19回 集会・結社の自由

  第17回で表現の自由の意味を把握し、第18回では表現の自由にも制限があることを確認しました。今回からは、具体的な表現の内容を見ていきます。

行政書士講座

まず、もう一度、精神的自由権の全体像を確認してみましょう。

憲法19-1

  上の表の知る権利までは、学習し、その制限についても確認しました。今回は、次の集会・結社の自由とその制限について勉強しましょう。

 

Ⅰ.集会の自由の内容

憲法19-2

  第1項の冒頭に出てくるのが、集会・結社です。集会とは、特定・不特定を問わず、多数の人がある一定の場所に集まる一時的な集団のことです。例えば、選挙の立会演説会に集まった人々がこれに当たります。

  第21条で保障されている集会の自由には次の2つの側面があると解されています。

①自由権的側面

②社会権的側面

①の自由権的側面とは、その目的や場所、方法、時間などは問わずに、集会を主催したり、集会に参加することを公権力によって妨害されないことです。②の社会権的側面とは、道路や公園、広場や公会堂などの公共施設を管理する公権力に対して、集会を開こうとする者が、その利用を要求することができることです。

  そして、これを具体化した規定が地方自治法で、地方公共団体に、住民の利用のための公の施設、例えば文化会館などの設置の義務付け、住民がその施設を利用することを正当な理由がない限り拒んではいけないこと――などを規定しています。

 

Ⅱ.集会の自由の制限

  さて、自由権的側面と社会権的側面から保障されている集会の自由ですが、集会は集団による行動を伴うため、施設・場所の他の利用者の権利や利益との競合や、集会どうしが競合する場合など、調整のために。当然、ある程度の制約が必要です。

これらの制約には、大きく3つがあります。

①官公署や公民会館などの公の建造物に対する管理権による制約

②公安条例による制約

③道路交通法による制約

 

  次にそれぞれの合憲性について見てみましょう。

①の官公署や公民会館などの公の建造物に対する管理権による制約について解説します。

  これを代表する事件に「泉佐野市民会館事件」があります。ある住民団体が、大阪府泉佐野市長に対して「関西新空港反対全国総決起集会」を開くために同市の市民会館の使用許可を申請しましたが、同市の条例にある市民会館の使用不許可事由の一つとされる「公の秩序を乱すおそれがある場合」と「その他会館の管理上支障があると認められる場合」に該当すると判断され、使用許可が下りなかったことが憲法第21条に反するか否かが争われた事件です。

この事件で、まず最高裁は、同市の条例で規定する「公の秩序を乱すおそれがある場合」の意味について「市民会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、会館で集会が開かれることによって、人の生命・身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避・防止することの必要性が優越する場合」と限定する――と言っています。

つまり、この事件の場合に集会を挙行したら、反対派の暴力的攻撃が予測されたので、会館職員、周辺住民、集会参加者の身体の安全が憂慮される事態であったから、条例の公民館使用規則における不許可になる場合に当てはまり、使用不許可とすることが許されると言っているのです。そして、市民会館が不許可を出した行為は合憲とされました。

憲法19-3

  一方、埼玉県上尾市で、労働組合の幹部の合同葬に使用するために、同市の福祉会館の使用許可を求めたところ、同市の条例を根拠に不許可とされたことの合憲性が争われた「上尾市福祉会館事件」では、不許可が違憲と判断されました。

この事件で最高裁は、集会に反対する者が紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設を不許可とできるのは、警察の警備等を行ってもなお混乱を防止することができないなどの特別な事情がある場合に限られる――とし、この事件の場合には、主催者が集会を平穏に行おうとしていることから、不許可の要件に当てはまらないと判断したのです。

 

②の公安条例による制約と、③の道路交通法による制約について解説します。

  道路や公園等での集会や集団行動に対しては、各地方公共団体の公安条例によって、届出制や許可制による事前規制が設けられ、違反者には刑罰が課せられるのが通常です。

  また、現行の道路交通法では、道路で一定の集団行動を行おうとする場合には、事前に所轄の警察署長の許可を得る必要があることが規定されています。

ですから、道路での集団活動は、公安条例がない地方公共団体では道路交通法の、公安条例がある地方公共団体では道路交通法と公安条例による二重の規制を受けることになります。

  公安条例や道路交通法による規制が合憲かどうかが問題となり、争われることがありますが、判例では、公安条例は一貫して、一般的な許可制は違憲であるが、特定の場所や方法を合理的で明確な基準をもって制限すれば許されるとし、道路交通法は、道路使用が不許可とされる場合の明確で合理的な基準を明示しているので、合憲であるとしています。

  それでは、その例として、「東京都公安条例事件」を見てみましょう。この事件で、Xはデモ行進を行う際に、東京都公安条例に基づき東京都から、集団行進を行う許可を得ました。その際、「蛇行進、渦巻行進、又は、ことさらな停滞等交通秩序を乱すような行為は絶対に行わないこと」という条件を付けられました。ところが、Xはその条件に違反し、蛇行進、渦巻行進をし、交通秩序を乱すような誘導、指示をしたため、東京都公安条例違反で起訴されました。

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  判例では、まず、一般的な許可制は違憲であるとしています。しかし、デモ行進などは最初は平穏静粛な集団でも、徐々に昂奮・激昂の渦中に巻き込まれ、甚だしい場合には一瞬にして暴徒化し、勢いのまま、実力によって法と秩序を蹂躙する事態に発展する危険性があることは、群集心理の法則と現実の経験に照らして明らかなので、条例などで規制することはやむを得ない――としました。

  この事案では、事前に明確な条件を付けて許可したのだから、特定の場所、または方法について合理的で明確な基準が定められていると言え、合憲と言っているのです。

 

Ⅲ.結社の自由の内容

  結社とは、共同の目的のためにする特定多数人の継続的な精神的結合体と言われています。簡単に言えば、集会の継続的なものと考えていいでしょう。

結社の自由には3つあります。

①団体を結成する自由・加入する自由(積極的な結社の自由)

②団体を結成しない自由・加入しない自由・脱退する自由(消極的な結社の自由)

③団体として活動する自由

 

  結社の自由に関する合憲かどうかの争点は、②の消極的な結社の自由についてです。例えば、「税理士は税理士会に加入しなければならない」など、一定の職業について団体の加入が法律上強制されていることの合憲性についてです。

  判例では、その職業の専門性・公共性を守るために必要で、なおかつ、団体の目的が会員の職業倫理の向上や職務の改善を図ることに限定されているのであれば、違憲とは言えないとしています。

 

Ⅳ.結社の自由の制限

  結社の自由の制限として、現行法上では破壊活動防止法で、一定の要件の下に公安審査委員会が団体の解散を行える旨を規定しています。この規定については、「裁判所ではなく公安審査委員会という行政機関が、重要な結社の自由の制限である結社の解散を行う権限を持っていいのか」という点から、憲法学者の間では、問題があるとする見解が有力です。

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