第13回 法の下の平等とは

  この回では、第12回で学んだ幸福追求権と並ぶ人権の基本中の基本、「法の下(もと)の平等」について解説します。

行政書士講座

  「人間は生まれながらにして平等だ」という思想は、古くギリシア時代に起源を持ちますが、憲法において保障されるまでには長い年月がかかっています。

平等という考え方を法としてはっきりと示すことを「法の下の平等」と言いますが、アメリカ独立宣言やフランスの人権宣言で、やっと平等が明文化され「法の下の平等」が近代憲法の基本原則となったのです。

さて、日本ではどうなのかと言うと、明治維新で江戸時代の士農工商制度が廃止され、四民平等になったものの、明治憲法下では、貴族は特権をもち、男尊女卑もしかり、外国人の差別的取扱いも憲法に違反しないとされていました。

日本においての本当の意味の平等権は、日本国憲法の制定で保障されるようになったのです。そして、日本国憲法は数カ所で平等権の大切さを謳っていますが、その最も中核なる条文といえば、第14条です。

憲法13-1

  この条文では第1項で法の下の平等を宣言していますが、まず「法の下に」について、少し補足したいと思います。

  法の下には2つの考え方があって、1つは、「法を執行して適用する行政権や司法権が国民を差別してはならない」という法適用の平等のみを意味する考え方です。

しかし、法の内容自体に不平等があると、それを平等に適用しても結果として平等とはならないことから、もう1つの「法の下に」として、法適用の平等のみならず、「法そのものの内容も平等の原則にしたがって定立されたものであるべきだ」との考え方があります。また、こちらの考えが、第14条の正しい解釈とされています。

すなわち第14条では、法の適用の平等だけでなく、法の内容の平等も保障されているのです。

 

  ここで、もう一つ考えなければならないのが、平等の概念です。憲法で保障されている平等とは、絶対的な平等ではなく、相対的な平等であると言われています。相対的平等とは、差別するべき合理的な理由がないのに差別してはならないということで、同一の事情と条件の下では均等に取扱うことを意味しています。

ということは、事柄の性質に応じて合理的な差別的取扱いを行うことは、憲法に反していないとしているのです。

では、いったい合理的な差別とは何でしょう。

最高裁判所は、合理的な差別の具体例として、

①強姦罪(男性だけが処罰されるのは男女の生物学的な構造の差に基づくとともに実際にも男性が女性に対して行うのが常であるから)

②定年制(終身雇用制度の下では、若年者に雇用の機会を与え、企業の若返りを図る合理的な制度であるから)

などを挙げています。

  また、第14条の第1項では、人種・信条・性別・社会的身分・門地を列挙して差別してはいけないと謳っていますが、これは、例を挙げたにすぎない(例示的と言います)ので、これ以外の不合理な差別扱いにも、第14条の保障が及びます。なお、門地は「もんち」と読み、家柄のことです。

 

Ⅰ.合理的な差別と認められた例

  この事件は、行政での取扱いが合理的な差別であると認められた事件です。

ある女性が、前夫から繰り返しドメスティックバイオレンス(DV)を受けたことで離婚し、半年後に現夫と再婚しましたが、離婚が成立する直前に現夫との間に女児を妊娠したので、離婚後にすぐ再婚を希望したものの、民法第733条の規定により再婚できませんでした。この女性は、民法第733条の規定は、男性に再婚禁止期間がないのと比べ、合理的な理由がなく女性を差別しており、精神的な苦痛を受けたと主張して、民法第733条の規定を不服として、国に165万円の損害賠償を請求した事件です。

憲法13-2

  民法第733条では、

「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」

と規定していますが、これは、再婚後に生まれてくる子の父を前夫の子とするか、現父の子とするかの問題と言えます。判例では、子の父親をはっきりさせるために民法第733条の規定は、法の下の平等を侵すことにはならないとしていますが、DNA鑑定などの進んだ今日では、両性の本質的平等に抵触するという指摘もあり、今度も注目される判例です。

 

Ⅱ.合理的な差別とは認められなかった例

  次の事件は、非合理的な差別であるとして、後に刑法の条文が削除される契機となった事件です。

父親によって性的虐待や父の子を何人も産むという生活を強いられ、監禁されていたある女性が、口論の末、実父を絞殺した事件で、通常の殺人罪より尊属殺人罪の量刑が重いことは、法の下の平等に反しないかが争われた事件です。

憲法13-3

  刑法第200条の規定の根底には、子の親に対する道徳的義務を特に重視した自然法に属する考え方が含まれています。当時は尊属殺人罪の場合では無期懲役が最も軽い罰でした。事例のように、常道を逸した状態に子が置かれた場合でも、無期懲役で情状酌量による減刑を行っても、執行猶予が付く3年以下の量刑にはなり得ず、刑法第200条自体が合理的ではないということになったのです。

この刑法第200条は、当時の国会が改正を議決しなかったため、刑法が文語体から口語体に変更された1995年(平成7年)の改正刑法において、傷害罪等他の尊属加重刑罰とともに削除されました。

  また、この事件は、最高裁判所が違憲立法審査権を発動し、既存の法律を違憲と判断した最初の判例となったことでも有名です。

このほかの憲法第14条をめぐる裁判について、主なものを下表にまとめます。

憲法13-4

  今回の法の下の平等は、必ず行政書士試験で出題されるといっても過言でない内容です。判例集などを使って、この内容を確認してみることをお勧めします。

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