第40回 衆議院の解散あるいは内閣総辞職

  今回は国家の行政権を担う内閣が、国会で不信任された場合について、①衆議院の解散、②内閣総辞職、③内閣が総辞職した場合の職の執行――に分けて解説します。

憲法40-1

 

Ⅰ.衆議院の解散

憲法40-2

  解散とは、議員の任期が満了する前に議院の任期を終了させることを言います。衆議院の解散の意義は次の2つです。

①解散後に行われることになる総選挙(憲法54条1項)を通じて、より民意に近い議会を再編成する民主主義的な意義

②権力分立の観点から、議会が専断化することを防止する自由主義的な意義          

  なお、今日では、①の民主主義的な意義が重要と言われています。

  

  憲法69条は、衆議院の解散について規定していますが、誰に衆議院の解散権があるのかを明記していません。また、第5回で解説した天皇の国事行為の中に衆議院の解散(7条3項)が定められているので、解散を行うのは天皇であることは明らかですが、実質的に解散の決定をするのかは明示されていません。

  実質的な決定権は内閣にあるということが現在の通説です。そして、その根拠は「解散は元来政治的な行為であり、それを国政に関する権能がない天皇の国事行為として形式化されるのは内閣の助言と承認があるからであるので、実質的な決定権は内閣にある」ことです。

  では、解散ができる場合とはどんなときなのでしょうか? 
69条から、

①衆議院で内閣不信任案の決議がなされた場合

②衆議院で信任案が否決された場合――が読み取れますが、このほかに、実質的な決定権が内閣にあることから、

③内閣が解散した方がいいと思った場合――もあるのです。

言い換えれば内閣が自由に衆議院を解散できるわけですが、いくら自由といっても恣意的な解散が許されるというわけではなく、あくまで、総選挙によって民意を問う必要がある場合に解散権が行使されるべきであることは言うまでもありません。

  上記の①②の場合、内閣が衆議院を解散させないのであれば、内閣は総辞職しなければなりません。総辞職とは、内閣の構成員全員が同時に辞職することです。それでは、次に内閣が総辞職しなければならない場合を見ていきましょう。

 

Ⅱ.内閣総辞職

憲法40-3

  69条と70条から、内閣が総辞職しなければならない場合には次の3つがあることが分かります。

①衆議院で内閣不信任案が可決された、又は、内閣信任案が否決された後、10日以内に衆議院が解散されない場合

②内閣総理大臣が欠けた場合

③衆議院の総選挙の後、初めて国会が召集された場合

  70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」とは、例えば内閣総理大臣が死亡した時などが考えられます。また、内閣総理大臣が資格争訟の裁判の結果や除名などによって、国会議員としての資格を失ったときには、内閣総理大臣としての資格も失いますから、これらの場合も欠けたときに当たります。

  次に「総選挙」が行われるのは、①衆議院の解散後②任期満了の2つの場合です。衆議院の解散後には、総選挙の日から30日以内に特別会が召集され、②の場合には新議員の任期が始まる日から30日以内に臨時会が召集されます。

 

Ⅲ.内閣が総辞職した場合の職の執行

憲法40-4

  71条は、内閣が総辞職した場合の内閣の職務の臨時的な執行について定めたものです。前の内閣が総辞職をした後、新しい内閣総理大臣が任命されるまで、臨時に職務を行う内閣のことを事務処理内閣と呼ぶこともあります。

  事務処理内閣は、その職務に特に限定を加えていませんが、71条の趣旨は、内閣が総辞職した後、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの短期間、国政が停滞してしまわないように、臨時に旧内閣に職務の執行を行わせようとするものなのですから、日常的な事務処理を超えて政治的に重要な行為を行うことはできないと理解されています。

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