第10回 そもそも人権って何?

  今回から行政書士試験では必ず出る人権の話をしていきます。インターネットなどで「人権」と検索すると、「人間が人間らしく生きるために、生まれながらに持っている権利」のように出てくることが多いと思います。

行政書士講座

でも、そのときは「なるほど」と思っても、では、「人間が人間らしく生きるとはどういうことか」とか、「生まれながらに持っている権利とは何なのか」など、また疑問が出てきてしまうことが多いのではないでしょうか? 具体的には次回から細かく出てきますので、そこで一つずつ覚えていくこととして、今日は、人権の全体像をつかみたいと考えています。

さて、これから人権についての学習を進めるうえで常に頭に置いてほしいのは、「人権は、私たちが社会生活において幸福な生活を営むためにどうしても必要な権利」ということです。これは、よく出てくる「人間が人間らしく…」のくだりと、まったく同じ意味です。少しだけ、分かりやすくなりましたね。

このことは、憲法では第11条に該当し、

「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」

と規定されています。一般的に言う「基本的人権の尊重」です。

 

  では、人権は絶対で無制約なものなのでしょうか? 

実は、憲法では人権には限界があるとしています。

第12条に、

「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」

と定めているのです。これは、ある人の人権を保障することが、他の人の人権を侵すことになることを禁止しています。

例えば、表現の自由も基本的人権の一つですが、他人のプライバシーを侵害する行為である場合は、制約を受けます。取材のためと称して芸能人の自宅に許可なく入って住まいを撮影し、週刊誌などに掲載したりすることが、これに当たります。

そして、この制約を「他者加害防止」と言い、「公共の福祉」とは、すべての人の人権がバランスよく保障されるように、人権と人権の衝突を調整することです。

憲法10-1

また、第13条には、

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福権追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

と規定していますが、ここでは、憲法の人権規定は、公権力に対する国民の権利や自由を保障していると明言しているのです。

では、個人と個人、国民と国民同士、法律用語で私人間(しじんかん)といいますが、私人間の人権侵害行為はどうなのかというと、民法の運用を通して、憲法の規定を間接的に適用することになります。

 

  それでは、憲法に規定された人権にはどのようなものがあるのでしょうか?

憲法に規定された人権は、その性質に応じて、

①自由権

②社会権

③参政権

④受益権

に分類することができます。

  自由権とは国が国民に強制的に介入することを排除して個人の自由な活動を保障する権利のことで、さらに自由権は、学問や表現などの精神的活動を行う精神的自由権、職業選択などの経済的活動を行う経済的自由権、国家から不当に身柄を拘束されたりしない人身の自由――に分かれます。

  また、社会権とは、社会的弱者が人間として当然の生活を送れるよう国家に一定の配慮を求める権利のことで、生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権――に分かれ、国民が政治に参加する参政権には、選挙権や被選挙権が、他の人権の保障を確実なものとするために国に対して一定の行為を求める受益権には、請願権、裁判を受ける権利、国家賠償請求権、刑事補償請求権が含まれます。

  これらの人権については、下表にまとめました。次回からは、それぞれの人権について個々に解説していきますので、参考にしてください。

憲法10-2

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