第3回 裁判上の紛争解決と裁判によらない紛争解決

  法は社会生活を円満なものにするためのものです。そこで、権利と権利がぶつかって何らかの紛争が生じたときは、法による何らかの解決策を見つけなければなりません。

  紛争解決のためには、原則として、自力による解決は避けることが原則となっています。その目的は、社会秩序の混乱を防ぐことです。そこで、まず、紛争解決の方法として考えられるのが、裁判所が法を適用して解決することです。

  しかし、裁判は、労力や費用といった面では当事者への負担が重いので、代わりに当事者の合意による紛争解決の方法もあります。

  今日は、①裁判上の紛争解決、②裁判によらない紛争解決――に分けてお話しします。

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Ⅰ.裁判上の紛争解決

  法治国家の下では、社会生活を送っているうえで当事者間に争いが生じた場合の解決方法には、国の機関である裁判所が、あらかじめ制定されている法律などに基づいた裁判によって解決する方法があります。この時、裁判所に訴えを起こし、法律に基づく裁判所の判断を求める手続きを訴訟と言います。訴訟は、事件の種類により①民事訴訟、②刑事訴訟、③行政事件訴訟――に分けられます。

 ①民事訴訟は、法人を含む個人対個人などの私人間の争いを解決する手続きです。

 ②刑事訴訟は、ある人の行為が犯罪となるかどうかを認定し、どのような刑罰を科すのかを決定する手続きです。

 ③行政事件訴訟は、行政活動に関連する紛争を解決する手続きです。

1.三審制

  三審制とは、裁判が確定するまでに3回まで審理を受けられる制度です。

三審制をお話しする前に、まず、裁判所について説明します。裁判所は、最高裁判所と下級裁判所により構成されています。さらに下級裁判所には、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所――があります。

基礎法学3-1

  次の裁判所の種類の説明を、上記の図で確認してください。最高裁判所は、上告や再抗告に対して最終的な判断を下す終審裁判所で、最高裁判所長官と最高裁判事14名計15名で構成されています。審理は長官と判事全員による大法廷か、3名以上の裁判官※からなる小法廷で行われます。通常は小法廷で審理しますが、判例を変更する等の重要な事件の場合は、大法廷で審理します。

  次に高等裁判所は、主に控訴・抗告、上告について裁判権を有する裁判所です。これに対し地方裁判所は、通常の訴訟事件の第一審裁判所ですが、軽微な事件では簡易裁判所が第一審となりますので、その時は控訴について裁判します。また、家庭裁判所は、家庭に関する事件の審判や調停と少年の保護事件の審判を行います。

  ※【裁判官と判事の違い】裁判官には、最高裁判所長官・最高裁判所
   判事・高等裁判所長官・判事・判事補・簡易裁判所判事の6種類が
       あります。つまり、判事は役職名です。

2.審理の流れ

  民事裁判では、権利を主張する者が原告となって相手方を被告として訴訟を行います。審理においては、訴訟資料の収集と提出は当事者の権能と職責となります。これを弁論主義と言いますが、事実の真偽が不明な場合は、各条文の要件を主張することで利益を得る側が、立証責任を負います。裁判所は双方の主張を聞き、判断を下します。

  一方、刑事裁判では、検察官が被告人の処罰を求めて訴訟を行います。民事事件とは異なり、訴えの提起(公訴提起)は検察官のみが行えます。審理では、検察官と被告人が主導権を持つ当事者主義が採られます。そして、事実の真偽が不明な場合、「疑わしきは被告人の利益に」という原則により、検察官が立証責任(挙証責任とも言います)を負うのが原則です。裁判官は双方の主張の争いを聞き、判断を下します。

3.裁判の原則

  審理の流れの中にも一部出てきましたが、主な裁判の原則を3つお話しします。

   ①公開裁判の原則

   ②証拠裁判主義

   ③当事者主義   ――です。

  ①公開裁判の原則とは、密室での裁判を禁止し、公正な裁判が実現されるために裁判は公開で行われるという憲法82条で保障された原則です。ただし、対審(民事事件では口頭弁論、刑事事件では公判)は、一定の場合、公開しなくてもよいことがあります。

  ②証拠裁判主義とは、刑事裁判では事実の認定は証拠によってなさなければならないとするもので、刑事訴訟法317条に規定されています。民事裁判では、弁論主義が採られる結果、当事者の自白した事実は証明の必要がないとされています。

  ③当事者主義とは、当事者に訴訟の主導権を委ねることです。民事訴訟では、紛争の当事者と裁判官により進められ、当事者が陳述した事実、提出した証拠に基づいて裁判が行われます。他方、刑事裁判では、証拠の収集・提出を当事者(検察官と被告人)に委ねて、当事者主義が具体化されています。

 

Ⅱ.裁判によらない紛争処理

  裁判によらない紛争処理には、裁判所内での手続きのほか、行政機関、弁護士会、民間団体による①和解、②斡旋、③調停、④仲裁、⑤相談――など、様々な形態があります。このような裁判以外の解決手段をADR(裁判外紛争処理)と言います。例えば、交通事故における(財)交通事故紛争処理センターなどがこれに該当します。

  また、裁判外紛争解決手続きの利用を促進させるために、2004年、ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)が制定されています。

1.和解

  和解とは、争っている当事者が互いに譲歩して争いをやめることで、a裁判外の和解とb裁判上の和解――があります。

  a裁判外の和解は、原則として和解契約の締結により成立します。一方、b裁判上の和解は、両当事者の有効な和解の陳述により成立し、和解調書が作成されると確定判決と同一の効力を有します。

2.斡旋

  斡旋とは、当事者間の紛争の解決を促進するために、各種の行政機関などが両者の間に入ってうまく取り持つことです。例えば、公害紛争解決のための公害等調整委員会などが行う斡旋がその一つです。

3.調停

  調停とは、調停委員会が当事者の互いの譲歩を促して、条理にかない実情に即した解決を図ることです。調停は、当事者が裁判所に申立てることで開始されます。

また、民事事件の場合、訴訟を提起する前に調停に付す義務はありませんが、家事事件のうちの民事訴訟を提起できる事件の場合、訴え提起の前に調停の申立てをしなければならないという調停前置主義が採られています。

4.仲裁

  仲裁は、2004年施行の仲裁法に基づいて当事者が第三者(仲裁人)の判断に従って紛争を解決する、ADRの代表的な制度です。仲裁人の判断(仲裁判断)は、裁判所の判決に相当します。しかし、その根底にあるのは、仲裁合意です。仲裁合意とは、紛争の解決を仲裁人の判断に任せようとする当事者の合意のことです。

  なお、仲裁法は、国際仲裁・国内仲裁、商事仲裁・非商事仲裁――の区別なく適用される点に特徴があります。

5.相談

  相談そのものは紛争処理ではありませんが、紛争を予防する機能を持ちます。そして、相談先の機関の影響力が大きい場合には、その機関が相手方と交渉することで、結果的に紛争処理につながることもあります。

基礎法学3-2

  以上、ADRを見てきましたが、最後に裁判による紛争処理とADRによる紛争処理の違いを上表にまとめましたので、確認してください。

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