第2回 法秩序の原則と法令の解釈

  前回は、法令の学問上のいろいろな分類の仕方と名称を紹介しましたが、法令は、とても秩序だって作られています。前回の最後の方で、○○法は○○法に優先するという原則をお話ししたと思いますが、今日はその辺りをもう一度整理することから始めたいと思います。

  では、今日のメニューは、①法秩序の原則、②法令の効力、③法の解釈――です。

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Ⅰ.法秩序の原則

  まず、前回の復習から始めます。日本の法秩序には3つの原則があります。
 

  それは、①形式的効力の原理、②新法優先の原則、③特別法優先の原則――です。

  日本の法秩序は、憲法を頂点としたピラミッドを形成しています。そして、ピラミッドの頂上から土台に至る法令の効力に優劣を付け、法令相互の内容が矛盾したり、衝突する場合には、ピラミッドの頂点に近い上位の法令が下位の法令に優先されます。これを①形式的効力の原理と呼びます。つまり、ピラミッドの頂点の憲法は、他のすべての国内法令に対して強い形式的効力を持ちます。

基礎法学2-1

   次に②新法優先の原則があります。新法優先の原則とは、形式的効力が同じである法令の規定が、相互に矛盾・衝突する内容であったときは、新しく制定された法令の規定が優先して適用されるという原則です。

  ある事項についての国の基本方針を定めたものを基本法と言います。例えば、教育基本法や農業基本法のように○○基本法と名付けられているものなどです。最近では、IT基本法なんていうのもありますね。しかし、実際の場面では、実施するために個別的・具体的内容を有する法律を別に制定するのが通常です。

基本法を実施するために新たに制定された法律が、基本法の内容に矛盾するときは、原則として新法優先の原則が妥当します。

新しい(=後法)、古い(=前法)の区別は、法令の成立の時期の前後で区別します。

 

  3つ目は、③特別法優先の原則です。特別法優先の原則とは、形式的効力を同じくする法令相互間で、ある事項についての一般的な規定を有する一般法と、特別な場合を規定する特別法がある場合、原則として特別法を優先的に適用するという原則です。

  この特別法が一般法に優先するという原則は、特別法が前法で、一般法が後法である場合にも妥当します。つまり、前法である特別法は、後法である一般法に優先するので、間違えないようにしましょうね。

 

Ⅱ.法令の効力

  法律は、憲法に特別の規定がある場合を除いて、衆議院と参議院で議決されたときに成立します。成立した法律は、国民に内容を知らせるために公表されます。この国民が法律等を知ることができる状態になることを公布と言います。法律の公布は官報に掲載することでなされます。官報とは、国としての作用に関わる事柄の広報や公告をするための国の機関紙です。

  法令の効力が一般的に発動し作用することを施行と言いますが、公布された成文法は、施行期日が定められていないときは、公布の日から起算して20日を経過した日から施行されます。一方、条例や規則は10日を経過した日から施行されます。

  また、法令は、原則として将来に向かって適用されます。例外的に、重要な公益上の必要があって明文規定されている場合には、過去の時点に遡って当該法令を適用させる場合が認められています。もっとも、刑罰法規(犯罪に対する罰則規定)には、遡及的適用が禁止されています。

  次に、法令の効力が及ぶ範囲をお話しします。原則として、法律や命令は、わが国の領域(領土・領海・領空)内です。地方公共団体の条例や規則等は、その地方公共団体の区域内で効力を有します。

  ただし、効力が及ぶ範囲には例外がいくつかあります。まず、地方自治特別法による場合で、法令が領土の全域に適用されないで、特定の地域に限って適用されます。例えば、長崎国際文化都市建設法がこれに当たります。

  次に地域立法による場合で、通常の法令でも事柄の性質上適用の対象となる地域が法令上限定されているものです。例えば、首都圏整備法などが該当します。

  また、公海上にある日本国籍の船舶や航空機内など法令が領土外に広がって適用される場合もあります。公海上にある場合だけでなく、日本国籍の船舶や航空機が外国の領土内にあるときも、船内、機内なら日本の法令が適用されます。これを旗国主義と言います。

  法令の人に対する効力には、①属地主義と②属人主義があります。①属地主義とは、領土内では外国人をも拘束するが、領土外では本国人も規制できないという考え方で、②属人主義とは、国民は領土内外どちらでも、本国法に従うべきものとする考え方です。

現代の国家は、属地主義を原則としながら、属人主義を併用しています。例えば、国際慣習法などによって、外交特権を有する外国の元首や外交使節は、属地主義の例外です。また、天皇や皇族などは、地位の特殊性から、刑罰法規等の一定の範囲の法令の適用が制限されています。

また、保護主義と言って、自国の重要な利益の保護を目的に、自国または自国民の法益を侵害する一定の重大犯罪に対して、犯人の国籍・犯罪等を問わず、すべての犯人に日本の刑法の適用を認めることもあります。例えば、内乱罪、殺人罪、強盗罪――などです。

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  そして、法令の効力は、次の4つの場合に消滅します。

①廃止または改正された場合

②あらかじめ有効期間が法定されている限時法の有効期間の到来

③法務省大臣官房司法法制部が行う法令の編纂において、廃止等の手続きはとられていないものの、日時の経過、関係事務の終了、規律対象の消滅等で適用される余地がなくなったか、合理的に判断して適用されることがほとんどないと認められるに至っている場合

④新法優先の原則による場合

Ⅲ.法の解釈

  法の解釈とは、法に含まれている法規範の意味内容を明確にする作業を言います。解釈の方法は、まず、①文理解釈、②論理解釈――に分けることができます。

文理解釈とは、法文の意味、または文言の意味を明らかにするという方法でなされ、言葉と文章に忠実な解釈です。ただし、法律用語は、私たちが日常的に使っている言葉と文字は同じでも異なった意味を持つことがありますので、注意が必要です。例えば、民法でいう「善意・悪意」は、ある事実について知らない(善意)・知っている(悪意)という意味です。

論理解釈とは、他の条文との関係、法文の目的および法制定の沿革や、法体系の中における条文の位置を考慮しながら行う解釈です。例えば、憲法21条2項の条文は、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」となっています。普通に読んだだけでは、検閲も通信の秘密を侵すことも同じように禁止しているように思えますが、実際の解釈では、歴史的背景を考慮した論理解釈をして、検閲は絶対禁止、通信の秘密については例外が許されると解釈されています。

論理解釈には、a拡張解釈、b縮小解釈、c類推解釈、d反対解釈――があります。

 a拡張解釈とは、法文の意味を普通に用いられる意味より拡張する解釈のことです。例えば、憲法81条の「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」という規定では、「法令、規則」の中に、地方公共団体の条例を含むとして、拡張して解釈されています。

 b縮小解釈とは、法文の意味を厳格に制限し、普通の意味より狭く解釈することです。民法177条は「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法……その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」となっていますが、この条文は縮小解釈され、「第三者」を当事者及びその包括承継人以外の者であって、「登記の欠缺(けんけつ:欠けていること)を主張する正当の利益を有する者」と解釈されています。

類推解釈とは、法規の定めた事項を超えて類似の事項にも推し及ぼすことです。例えば、民法94条1項の規定は「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする」、同じく2項は「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」とありますが、当事者間に通謀(相手方とあらかじめ示し合わせて事をたくらむこと)がなくても、登記されていないことを長期間にわたって黙認するなどの通謀に匹敵する事情がある場合には、この民法94条2項の規定を借用して類推解釈されます。

  なお、刑法は罰刑法定主義が採られているので、拡張解釈は場合によっては許されますが、類推解釈は許されません。

類推解釈の一種にもちろん解釈といって、ある法令の文言として規定されていないものの、立法目的や趣旨等から見て適用されるという解釈があります。例えば、民法738条は「成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない」と規定されていますが、成年被後見人の場合に同意が必要ないなら、もちろん被保佐人の婚姻にも保佐人の同意が必要ないと解釈するものです。成年後見人や保佐人などの語句は、民法を学ぶ際に確認してください。

基礎法学2-2

   最後に、d反対解釈とは、法規の定めた事項の反面から、定められていない事項について反対の結果を引き出す解釈です。民法96条3項では「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない」とありますが、強迫については列挙されていないので、強迫による意思表示の取消しには、同規定が適用されないと解釈するのが反対解釈です。反対解釈を行う場合は、類似する事柄のうち一方のみが法令に明記されているのに、他方については何ら触れられていない場合です。
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